読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Loose Life

旅とフットボール:a wondering footballer's loose life part3

テクノロジーはサッカーを完全なるスポーツにする



観客の視点がセンターサークルに置かれた一つのボールに集中する。

審判の笛はならない。どうやらKOKS(キックオフ監視システム)はキックオフが正常に行われたことを認めたようだ。
観客は胸をなで下す。

誤審はあってはならない。誤審で自分の愛するチームが敗退するなんてありえない。
誤審こそがこの世の最大の敵だ。

様々なテクノロジーの発達により、急速にサッカーから誤審は消えていった。

青いシャツのチームのプレイヤーが大きくタッチラインに蹴りだし、試合は一旦途切れる。
青いチームのプレイヤーが蹴りだしたようだが本当だろうか?
すぐさま、そのボールは係員の手で、SBSKS(最後にボールに触った人検知システム)にかけられる。
赤チームの選手がもしも触れていたら、システムは即座に青チームのボールで再開されることを示す。

最後にボールを出した相手チームのボールで試合は再開される。サッカーの大原則だ。こんな初歩的な間違いがあってはいけない。何故ならサッカーは公平はスポーツだからだ。

赤チームの選手がボールを持ちスロウインの準備をはじめる。

だが、すぐにボールを投げ入れられることはない。
キックオフされてわずか30秒であるが、全てのプレイについて検証されなければならない。
21世紀のはじめに採用されたビデオ判定システムはサッカーから誤審を一掃した。

30秒のプレイを様々な角度の映像から繰り返し繰り返し検証するのだ。たとえ何分かかろうともそれは正しいことなのだ。

試合時間は前後半45分というのは変わらない。
ビデオ判定の時間のために、実際の試合時間は圧倒的に長くなった。
今日の試合は午前8:00キックオフである。

誰もが愛するサッカーから誤審が無くなったのだ。喜ばしいことではないか。
愛するサッカーが長い長い時間楽しめるのだ。誰も文句なんか言わない。

お隣の朝鮮統一リーグでは朝6:00キックオフの試合もあると聞く。
誤審さえなくなるのであれば休日の早起きなんて大した問題ではない。

30秒のビデオ判定に約7分の時間が費やされ、主審の笛で再開する。
どうやら赤チームのスロウインがファウルスロウだったようだ。TITNKS(スロウインちゃんと投げない検知システム)がそれを示している。
システムがそう言っているのだ。それは正しい。赤チームのサポーターもシステムの判断に拍手を送る。

あらゆる検知システムによってサッカーから誤審は完全になくなった。サッカーは完璧なスポーツとなった。

世界中のサッカースタジアムに同一の最新システムを導入することで膨大なコストが必要となった。そのためチケットの値段は桁が二つ変わるほど高価になった。
だが、誤審さえなくなるならそんなことは些細なことだ。スタジアムに押し寄せた約20人の観客の笑顔がそれを物語っている。

試合時間が長くなり、飲食やトイレの時間が懸念されるが、ビデオ判定の間に済ませばいいのである。何よりも合理的だ。
ペットボトルのピッチへの投げ込みが不安視されるが、PBNKS(ペットボトル投げ込み監視システム)がそれを許さない。たちまち数十人の係員に抑えつけられ、永久に入場禁止となる。

スタジアム同士をつなぐ高質のネットワークによって世界中のスタジアムへの出入りが禁止になるのである。そんなリスクを負ってまで投げ込みを行う者なんていない。もっとも、判定にミスがない今のシステムでペットボトルを投げ込もうという心理に陥ることはまずないのだが。

試合は0-0で終わった。主審の持つ時計は1/1000000000秒まで正確に測定し、アディッショナルタイムには0.01%の誤差さえも許さない。
今シーズンから導入された数億円をかかると言われる、三種類のセンサーを連動されたゴール検知システムは今日は出番がなかった。

「サッカーは完璧になった」

完全に日が落ち、ライトの燈された大して混在のない駅のホームで誰かが言った。そうだ、これが正しいのだ。